文章練習

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定跡と美しい手

定跡について論じたいと思う。

将棋には定跡がある。初手から何手か進むと戦型が決まってくる。

居飛車振り飛車か、角交換するかしたいか、急戦か持久戦なのか、お互いの手を読み取って、どう指すか方針を決定するのである。そうなると定跡の出番である。どうしても頻出する局面になるので、あらゆる変化を研究し尽くされ、もっとも最適な駒運びが判っているのである。

もちろん相手の意表をついて、トリッキーな訳のわからない展開に持ち込む作戦もある。そうなると定跡をすでに外れているので力戦となる。

では暗記すれば良いのかというと、半分正解で半分外れだと思う。丸暗記ではなく、意味が分かったうえで覚えているのが正しいのである。理由は、なぜ、そう指すのかを理解していないと、対戦者が間違えたときにとがめる手を指せないからである。そう、本来、定跡は間違えたらアウトなのである。定跡を間違えても何も起こらないのは、ただ単に対戦者が弱いからであり、実力者に対しては危険である。だから定跡なのである。

 

で、だ。

ド初級者が、定跡本を読んで丸暗記したところで強くならないが、暗記できなくとも勝てないわけではないのである。むろん、定跡を知らずに強い人と対局すると100%負けるが、中級者以下との対局では相手も間違えるので、それをとがめられれば有利になる。必ずしも定跡を完璧に暗記せずとも勝てないわけではないのである。

そもそも、ヘボとの対局では棋書にあるような展開にならない。その前に、勝手に向こうから自爆するような手を指してくるのである。ある程度の棋力がある相手とでなければ棋書にあるような局面にすらならないことが多いから、ひたすら定跡や戦法を丸暗記しただけでは強くなれないのである。

前回の記事で美しい手と書いた。美しいとか勝負には関係ないと思う輩も居ようが、それは間違いである。

将棋は礼儀が大切である。勝っても負けても、対局してくれた相手に対して礼を尽くす。なぜなら、全力を尽くして対局してくれたからこそ、自身もまた強くなれるからだ。本気でぶつかってきてくれて本当にありがとう、あなたのおかげで強くなれるという感謝とリスペクトの気持ちを対戦相手に対して表すのが礼である。

美しい手とは、相手も唸るほどの良い手である。

詰みを見つけたら速攻で詰ます。詰みが見えているのに、意図的に駒得の手を指すのは辛い手ではなく友達をなくす手であり、美しくない手である。

だからプロ棋士は、最後に形を作って投了し、良い勝負だったとして美しい棋譜を残す。

投了は、自陣の詰みが見えて、かつ相手は間違えないだろうという信頼である。

最後のおねがいや記念王手くらいは良いとして、勝つ見込みがないのに無駄に王手をかけて、時間切れ勝ちを狙うのは美しくないのである。

自陣が攻めを受けきって相手陣が姿焼きになるのは一局だが、じわじわと駒を取って積極的に攻めないのは情けない将棋である。

コンピューター将棋では、歩以外渡さないように駒得を狙い、じわじわと追い詰める作戦もあるが、それはまた別のゲームのような気がするのである。ゲームとして、どうしても勝ってレートを上げたいというなら話はわかるが、純粋に棋力を向上したいなら無駄な時間を過ごしているような気がするのである。

将棋は礼が大切だといったが、将棋はスポーツ、一種の武道に近いと思うのである。

論理ゲームなのであるが、実際にはパターン認知能力を高めないと将棋は勝てないのである。スポーツは反復練習と試合の数をこなして経験を積むことで技術が高まるわけで、つまり口で理屈を伝えるだけでは教えられない世界なのが共通しているからである。論理だけで勝てるなら、もっと早くコンピューターが強くなったはずである。

将棋が強くなるためには、数多くのパターン認知が絶対に必要なのである。そのための反復練習として高度な対局を数多く並べるのは理に適っているのである。

 

棋譜を見ていると、これは渋い手だなとか、攻めが遅くみえるが格調高い手だななど、少しずつ分かってくるようになる。その手が見えてこない限り強くはなれないのだが、意図が読めるようになるだけ強くはなっている。

 

目下の悩みをここに記す。俺自身はいまだヘボ将棋であるが、同等かそれ以下の人と指しても成長するのかどうか。現時点での結論は、強くならない、あるいは緩やかに強くなるである。理由は、こちらの悪手をとがめてこないので勝負が成り立つような対局になるからである。最低限のレベルに達していないと将棋にならないような気がするのである。

将棋には最低限のルール以外のお約束があって、それをマスターしていないとヘボ将棋になってしまうと考えているのである。では、どこまでマスターしていれば本来の将棋になるのか。その定義は難しい。俺は、おそらくアマ初段がその入り口ではないかと考えている。

だから、最低限の戦法と囲いを身につけて、常識的な定跡、手筋を活用できて、3手詰程度なら見える棋力がないと、スタート地点に立っている実感が湧かないのである。

現在の目標は初段である。

 

これで約2000字である。休み休み書いて一時間半程度。

将棋ネタと思って読んでいる人にとっては全く有用な情報がなく申し訳がない。むしろここまで読み進めていたのであれば、あなたは相当忍耐力が高い人である。